【プロフィール】
陶芸家。東京都生まれ。 果実やつぼみなど自然が生み出すアシンメトリー(非対称)な造形の美しさに魅せられて以降、継続してそれらをモチーフに作品を制作している。1997~99年ファエンツァ国立陶芸美術学校在籍。東京国立近代美術館やファエンツア国際陶芸美術館などにコレクションされている。
【ステートメント】
人間では到底生み出せない造形美がある。それは自然物だ。
高橋は果実やつぼみなど自然が生み出すアシンメトリー(非対称)な造形の美しさに魅せられて以降、継続してそれらをモチーフに作品を制作している。
なぜ自然が生み出す造形美に惹かれ、どのようにその形を追求してきたのだろうか。
高橋は、第二次ベビーブーム世代ということもあり、幼少期はどこに行っても人、人、人がひしめきあい、一様に同じ行動を求められる窮屈さを感じる日々であったと述べている。
それは、武蔵野美術大学に入学しても変わらなかった。使いやすく、シンプルで美しい器。このテーマのもと、皆が同じようにロクロを回しているように思えた。
そんなあるとき、陶芸にも器以外の分野があることを知った。ロクロから離れ、造形的な作品を作りたいと思う気持ちが膨らみ、陶彫コースがあるイタリアのファエンツァ国立陶芸美術学校に入学することになる。制作の合間に、ミュージアムを見て周るが、西洋の作品を見れば見るほど、目に留まるのはアシンメトリーな日本の作品であった。特に、ファエンツァ国際陶芸美術館で開催された展示「樂茶碗400年・伝統と創造」に強い興味を惹かれた。
西洋の美が均整や完璧、華麗さを求めるのに対して、日本人の持つ美意識には、不均整や不完全、簡素なものに美を感じる要素がある。それらは、古くから「わび・さび」や「幽玄」 などの言葉に表現されてきた。言い換えれば、西洋においては秩序あるシンメトリー(左右対称)で人工的な美しさを求めるのに対し、日本では自然との調和を基本にしたアシンメトリー (非対称)の造形に美しさを求める。高橋はその美意識の差異を図らずもイタリアで感じ取ることになったのではないか。
造形美を追求するうちに、たどり着いた素材は、凛として美しい「白」という特性を持つ磁土であった。イタリアでは、マリア像などは磁土で作られており、磁土で造形作品を作ることに対しての希望が見えてきた。しかし、磁土は陶土よりも扱いが難しく、磁土で造形を創ることにあらゆる技法を試す必要があった。理想の造形を創るために、モチーフである非対称な形の「果実」を抽象化し、複数のパーツに分けて「鋳込む」という手間のかかる工程により制作することにたどり着く。
そして出来上がった作品には、鋭さと滑らかな線から生まれる陰影が立ち現れた。白磁の素地に映る陰影は、一様ではない。それらにはグラデーションがあり、空間や光に作用し、微妙な色合いの変化を映し出す。さらには、白一色の白磁だからこそ、陰影や造形の美しさが一段と増すのだ。
高橋が体現する、アシンメトリーという日本の美意識にも通底する究極の造形美には、分野を問わずすでに国内外から熱い視線が注がれている。
(B-OWND)
【略歴】
- 1997年
- 武蔵野美術大学短期学部専攻科(陶磁コース)卒業
- 1997年
- ファエンツァ国立陶芸美術学校在籍(イタリア)
- 1999年
- 国際陶芸シンポジウム参加、‘アートケラミカトロヤン99’(ブルガリア)
グループ展
- 2019年
- 「白磁の形 高橋奈己展」LIXILギャラリー (銀座・東京)
- 2019年
- 「岡田文化財団設立40周年記念 第14回パラミタ陶芸大賞展」(パラミタミュージアム・三重)
- 2019年
- 「質感」稲葉周子・内田翠・高橋奈己(現代美術艸居・京都)
- 2019年
- 「高橋奈己・竹岡千穂 ー白磁と漆ー」(銀座三越・東京)
- 2018年
- 「長谷川まみ・高橋奈己・浅野絵莉 三人展」寺田美術
- 2018年
- 「移転十周年謝恩企画第二弾 向付展」柿傳ギャラリー
- 2018年
- 「陶芸~新世代の技とかたち~」展 札幌芸術の森工芸館
- 2018年
- 「国際陶磁器フェスティバル美濃 桃山から現代へ 志野、織部 伝統の継承展」横浜そごう美術館
- 2018年
- 「日本×ファエンツァ姉妹都市・国際陶芸展・陶芸学校 交流の軌跡展」 (ファエンツァ・イタリア)
- 2017年
- 「COLLECT 2017」出展(イギリス・ロンドン)
- 2017年
- 「現代作家茶碗特集展」日本橋三越
- 2017年
- 「清州工芸ビエンナーレ」出展(韓国)
- 2017年
- 「国際北陸工芸サミット「ワールド工芸100選」」展 富山県美術館
- 2016年
- 「近代工芸と茶の湯Ⅱ」東京国立近代美術館工芸館
- 2016年
- 「SOFA CHICAGO」出展(シカゴ)
- 2016年
- 「FINE ART ASIA」出展(香港)
- 2016年
- 「現代茶の湯工藝展:流儀を問わず今を問う」伊勢丹新宿店
- 2015年
- 「一点展」SHISEIDO THE GINZA
- 2011年
- 「オブジェとうつわ展」日本橋高島屋
- 2011年
- 「今井一美・オクムラケイコ・高橋奈己 三人展」 渋谷西武ギフトギャラリー
- 2010年
- 「−うつわとオブジェ展−」日本橋高島屋
- 2008年
- 「―わかもん展―」陶彩(東京・新橋)
- 2006年
- 「JinJin−やきものの行方―」Gallery Jin(同、2007年)
- 2005年
- 「ガレリアセラミカの110人展」世界のタイル博物館(愛知・常滑)
- 2005年
- 「朝日現代クラフト展入賞・入選作家特集」展 (阪急百貨店、大阪・うめだ本店)
- 2001年
- 「ガレリアセラミカの11人展」世界のタイル博物館(愛知・常滑)
- 2000年
- 「器・オブジェ・小さな道具展」INAXガレリアセラミカ (新宿、札幌)
- 2000年
- 「国際陶芸シンポジウム展」ギャラリー「シプカ6」(ブルガリア)
- 1999年
- Faenza(イタリア)
- 1998年
- Bagnacavallo(イタリア)
個展
- 2019年
- 日本橋三越アートスクウエア
- 2019年
- アートサロン光玄 (名古屋・愛知)
- 2017年
- 日本橋三越美術サロン
- 2017年
- 現代陶芸サロン桃青(大阪大丸心斎橋店)
- 2017年
- GALLERY YUNOR(東京・白金台)
- 2014年
- ギャラリールヴァン(東京・目白)(同、2017年)
- 2013年
- リスン青山(東京)、リスン京都
- 2010年
- 柿傳ギャラリー(東京・新宿)(同,2012年,2014年,2016年,2018年)
- 2009年
- SAN-AI ギャラリー(東京・水天宮)(同、2010年,2013年)
- 2009年
- ギャラリー福果(東京・神保町)
- 2007年
- 「白磁のフラワーベース展」新宿高島屋
- 2005年
- 乾ギャラリー(東京・赤坂)(同、2008年)
- 2004年
- Gallery Jin(東京)
- 2003年
- Gallery Jin(東京)
- 2000年
- INAXガレリアセラミカ(東京)
入選、その他
- 2018年
- 「第11回現代茶陶展」TOKI織部大賞
- 2017年
- 「第3回金沢・世界工芸トリエンナーレ」入選
- 2017年
- 「第42回日本陶芸展」茨城県陶芸美術館賞
- 2017年
- 「第57回東日本伝統工芸展」入選(同、2018年,2019年,2020年)
- 2017年
- 「第64回日本伝統工芸展」入選(同、2018年,2019年)
- 2016年
- 「第63回日本伝統工芸展」新人賞
- 2016年
- 「第4回陶美展」入選(同、2018年)
- 2016年
- 「第50回女流陶芸展」T氏賞
- 2015年
- 「第8回現代茶陶展」入選(同、2016年,2017年2019年,2020年)
- 2013年
- 「第5回菊池ビエンナーレ」入選(同、2015年,2017年)
- 2008年
- 「第8回国際陶磁器展美濃」入選(同、2014年,2017年,2019年)
- 2006年
- 「第44回朝日陶芸展」入選
- 2006年
- 「第20回高岡クラフト展」入選
- 2003年
- 「第21回朝日現代クラフト展」入選(阪急百貨店・大阪、横浜) (同、2004年,2005年,2006年,2007年,2008年)
コレクション
- 東京国立近代美術館
- 茨城県陶芸美術館
- INAXライブミュージアム
- ファエンツア国際陶芸美術館 Museo Internazionale delle Ceramiche in Faenza