工芸は「使える」という特性を持つことによって、純粋なアートとして表現の評価がないがしろにされているのではないか。野田ジャスミンは、あくまで道具であることが工芸性であるとして、その工芸性を担保するため、器の形で作品を制作している。その一方で、いかにその役割を解放し、純粋に鑑賞の対象となる作品を制作できるか、その表現を探し求めている。(B-OWND)
現代的で洗練された雰囲気も相まって、それはまるで知的な遊具のようである。
しかし、この器全体には、印象的な黒い亀裂が走る。
野田ジャスミンは、タイの出身。幼少期に日本に移り住んだ。
作品にどことなく漂う、異国風の雰囲気は、この出自から来ているのだろう。
彼の代表作《ghost》のこの亀裂は、本シリーズを手掛けたころに野田が感じていた、さまざまなコンプレックスや、工芸でアート作品を制作することの肩身の狭さなど、ネガティブな感情が反映されているという。
しかしこの亀裂はまた、もう一つの意味を持っている。
それは、工芸作品が担う「用途」からの解放である。
工芸は、「使える」という特性を持つことによって、純粋なアートとして表現の評価がないがしろにされているのではないか。
工芸を学び、制作に携わるようになってから、野田は工芸でアート作品を制作することの難しさを知る。
野田は、あくまで道具であることが工芸性であるとして、その工芸性を担保するため、器の形で作品を制作している。その一方で、いかにその役割を解放し、純粋に鑑賞の対象となる表現を模索する。工芸的なアプローチとアート的なアプローチ、双方を取り入れた作品として、代表作《ghost》は生まれた。
「用途性のコンプレックス」は、多くの工芸系アーティストが抱えるものでもあるだろう。
その中で、これまで多くのアーティストたちが、この課題に向き合いながら、さまざまな試みを行い、さまざまな方向性を示してきた。
先駆者たちが行ってきたこれらの試みを、野田はひとつひとつ確かめながら、それらの点を渡り歩く。
陶芸とは何か、アートとは何か。
それらをニュートラルに提案しながら、どちらに偏ることもない歩みを通して、とらえがたいものを理解するべく、表現者として探求する。
(B-OWND)
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