窓に差し込む朝日に爽やかさを感じたり、湖面の静けさに神秘性を覚えたりするのは、自然に対する人の本能的な感覚であろう。他方、気が遠くなるような手作業を見て感動するのもまた、人の感覚である。
官野の制作は自然現象を彫刻の要素に加えて、その融合とコントラストを追求している。自然現象を解体し再構築するその作業は、人が記憶を起こすときに匂いや温度を関連づけて想起するように、別の感覚同士を結びつける関係に似ている。
10年以上乾漆技法で人体彫刻を制作していた官野は、コロナ禍をきっかけにしてモチーフを人の内面へと移行させていった。そして現在制作するものは、美しい形態の模倣ではなく、光との調和によって生み出される幻想的な彫刻である。これらの表現の本質は、物体としての存在そのものではなく、光を反射し、透過する現象とともにある。即ち、人の揺れる心を反映するような「光の彫刻」と解釈することができる。あるいは、光の屈折によって作られた構造による色彩の表現を、分厚く塗られた絵の具と解釈すれば「現象による絵画」とも言えるのだろう。
作品群の文脈からは、彫刻としての物質の概念から解き放たれ、深層にある認識の美を見つめ直すための問いと答えであることが読み取れる。
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