井上祐希 | 天王洲のアートスポット WHAT CAFE
【プロフィール】

陶芸家。1988年、佐賀県生まれ。2011年、玉川大学芸術学部卒業。同年、株式会社ユナイテッドアローズに入社。2012年より、祖父であり人間国宝の井上萬ニに師事。現在は井上萬ニ窯を経営しながら、ファッション業界とのコラボレーションなども積極的に行う。受賞歴は、2018年、佐賀県美術展 入選、2019年、有田国際陶磁展 入賞、2020年、日本伝統工芸展 入選など多数。

【ステートメント】

一点の曇りもない、透き通るような白磁。その素地に、街の方々にありありと広がる、現代のヴィヴィットな世界を描く。陶芸家・井上祐希は、伝統という壁に新たな色彩を引き込もうと奮闘する、一人の若きアーティストである。

井上は、400年の歴史を持つ陶磁器の産地、有田の出身。良質な土、ロクロの高い技術に定評のある萬二窯の三代目である。人間国宝の祖父・井上萬二氏の作品は、豪華な絵柄が特徴的な有田焼において、白磁の美しさを活かした造形を示し、その新たな可能性を切り開いたことで「究極の白磁」と称される。

井上は、幼いころから萬二窯を継ぐことを期待されてきた。反発はなかったが、しかし一方で、ストリートカルチャーに憧れ、グラフィティ・アートやラップに感性を刺激された。一時はファッション業界に身を置きながらも、この出自・資質をどう生かしていくか、彼はこの課題と向き合い続けた。

ストリートカルチャーの歯に衣着せぬ物言いやハングリー精神、色彩感覚、ファッション。それらは、井上にとって、恵まれた環境を自覚させるとともに、自らが持ちえないものも自覚させた。それらに対する強い憧憬は、井上の中で徐々に熟成され、作品にその片鱗を見せ始めている。

たっぷりと釉薬を含ませた筆を、軽やかに、自由に、ときに振るように揺らす。するとそこには、強弱にとんだ美しい景色が浮かび上がる。「釉滴(ゆうてき)」と呼ばれる技法を用いた井上の代表的作品は、あえて筆をコントロールせず、無意識に浮かび上がるそれらの、偶然性・即興性を楽しむものである。

窯の特徴である白磁の美しさを引き立てる表現でありながら、祖父・萬二氏の完成された造形美とも異なる方向性。井上がまさに今踏み出したこの道の先に、ストリートカルチャーと伝統が融合した、新たな境地が見えてくるのだ。

伝統という名の白い壁に、彼はこれから何を描くのだろうか。有田という地を愛し、誇りながらも、肌で感じる現代の美を自らの感性で表現すること。
アート、工芸、ファッション…。そういったジャンルに捕らわれない先に、井上が目指す新しい有田焼の姿がある。

(B-OWND)

【略歴】
1988年
佐賀県有田町 生まれ
2012年
祖父 井上萬二に師事

受賞歴

2020年
日本伝統工芸展 入選
2019年
有田国際陶磁展 入賞
2016年
西部伝統工芸展 入賞
2015年
佐賀県美術協会展 入賞
2014年
佐賀県美術協会展 入賞

入選、その他

2018年
佐賀県美術展 入選
2017年
日本伝統工芸展 入選
2013年
陶美会展 入選
【Profile】

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