平澤賢治 | 天王洲のアートスポット WHAT CAFE
【プロフィール】

現在は東京とロンドンを拠点に活動する写真家・現代アーティストの平澤賢治(1982年生まれ)は慶應義塾大学環境情報学部に在学中に人工衛星を用いたリモートセンシングの技術を習得し、その装置のひとつであるサーモグラフィカメラを用いた美術作品の制作を開始した。その後、2008年に渡英してロイヤル・カレッジ・オブ・アートの大学院で本格的に写真を学んだ。自然光でも人工光でもなく有機体が内的に発する光を捕捉することで生まれる初期のポートレイト写真作品は、鑑賞者に生命現象に対する驚きと畏敬の念を喚起する。存命の著名人の蝋人形をサーモグラフィーカメラで撮影した平澤の代表作「セレブリティーズ」シリーズでは、逆説的に生命と非生命の境界線をめぐる問いを投げかける。加えて蝋人形に群がる観客も一緒に写した「セレブリティー」シリーズは、有名人への偶像崇拝という現代的現象を通して、階級やアイデンティティにまつわる社会的批評性を獲得している。恋人の死を境により動的な表情や躍動感にも関心を抱くようになった平澤は動物や舞踏に被写体の対象を拡大し、新しいメディウムやテクノロジーを積極的に摂取しながら自身の創作活動の幅を広げている。近年、平澤は鏡面にサーモグラフィカメラで撮影した被写体の体温を数値化した数字を刻印した作品を制作している。ここには生命現象を客観化されたデータとして理解しようとする姿勢が垣間見えるが、同時にその数字の羅列がぼんやりと浮かび上がらせる人物像は豊かな感情を備えた生命の姿である。こうした平澤の芸術実践は奇しくも同じ「情」という漢字を含む動的な「情」動と静的な「情」報の二項対立を揺さぶり、生命の永遠性という深遠なテーマをめぐる探求の道程を示唆する。執筆・山本浩貴(美術史学者)

【略歴】

平澤賢治|Kenji Hirasawa

1982年東京都生まれ

– 学歴
2016 ロイヤル・カレッジ・オブ・アート 美術科写真専攻 修士課程修了 (イギリス)
2006 慶應義塾大学 環境情報学部卒業

– 賞・助成
2021 アーツカウンシル東京「東京芸術文化創造発信助成」授与
2012 Paris Photo-Aperture Foundation PhotoBook Awards ノミネート (アメリカ/フランス)
The Magenta Foundation 主宰 Flash Forward Award 優秀賞 (イギリス)
Kassel Photobook Award 2012 ノミネート (ドイツ)

– 出版・掲載
2016 ジャーナル「ZEIT WISSEN 1/2016」 (ドイツ)
2013 写真集「Kenji Hirasawa. PORTRAITS」Libro Arte (日本)
写真専門書「Lucy Soutter. Why Art Photography?」Routledge (イギリス)
2011 写真集「Kenji Hirasawa. CELEBRITY」Bemojake (イギリス)
写真専門誌「Photoworks #17 Contested Evidence」 (イギリス)
写真専門誌「GUP #31 Experimental Issue」 (オランダ)
写真専門誌「Voices of Photography #01 New Documentary」 (台湾)

– 展示
2024 ふたり展「Eternal L」上野下スタジオ (東京)
2023 個展「A for Animal, Q for」花園アレイ Room101 (東京)
2022 個展「If love is quantifiable,」BUoY Arts Center Tokyo (東京)
渋谷ファッションウイーク・パブリックアート「THERMOMACY / PLAY FACE CELEBRATION」渋谷スクランブル交差点 (東京)
2021 ふたり展「Light and Heat」MYD Gallery (東京)
2020 グループ展「アジテイション:攪拌のポートレイト」コートヤードHIROO (東京)
2019 フェスティバル「浅間国際フォトフェスティバル」ルオムの森 (北軽井沢)
フェスティバル「”FRESH EYES”, Voies Off Festival」Cour de l’Archevêché (アルル/フランス)
2018 個展「EN」BUoY Arts Center Tokyo (東京)
フェスティバル「”PROVOKE 2.0″, Festiwal Fotografii Plener Żory」Muzeum Ognia (ジョルィ/ポーランド)
2017 グループ展 (巡回)「BEYOND 2020 #5」KunstENhuis (アムステルダム), Galerie Nicolas Deman (パリ), IMA gallery (東京)
2016 個展「HORSE」ISSEY MIYAKE GINZA (東京)
2015 グループ展「Focal Point」Unit24 Gallery (ロンドン)
2014 グループ展「G BOOK SHOW」One Eyed Jacks Gallery (ブライトン)
2013 個展 (巡回)「PORTRAITS」B GALLERY (東京), SLANT (金沢), Bloom Gallery (大阪)
アートフェア「FOTOFEVER」カルーゼル・デュ・ルーヴル (パリ)
2012 アートフェア「PARIS PHOTO 2012」グラン・パレ (パリ)
フェスティバル「TIFF International Photography Festival 2012」 (ヴロツワフ/ポーランド)
フェスティバル「GET IT LOUDER 2012」Sanlitun Village (北京)
2011 個展「CELEBRITY」KK Outlet (ロンドン)

– リンク
https://kenjihirasawa.com
https://www.instagram.com/kenjihirasawa.ig

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