陶芸家。1990年、宮城県生まれ。2013年、東北芸術工科大学芸術学部美術工芸コース卒業。2015年、東北芸術工科大学大学院芸術文化専攻工芸研究領域修了。同年より宮城県柴田町の工房で活動を開始し、2022年には拠点を多治見に移して作陶を続けている。
これまで、銀座一穂堂や日本橋髙島屋S.C.などで個展・グループ展を開催している。
生物の硬い鱗、または分厚い皮膚を思わせるその表面は、凹凸に富み、また形もいびつである。
陶磁器のうわぐすりにできた、細かいひび割れ。
「貫入」というこの伝統的な技法は、その割れ目に鮮やかな色漆をしみこませることで、新たな表現へと生みなおされた。
器全体をめぐるその細い亀裂は、まるで透けた皮膚の下にのぞく毛細血管のように、どこか痛々しくも、確かな生命感を主張する。
氏家は、小耳症という先天性の一側性難聴を患い、不完全な左耳を持って生まれた。
1-2万人に一人という確率である。
幼少期はその耳の形成のため、10回にもわたる手術が行われたが、
しかし、その末に出来上がった耳は、氏家に大きなショックを与えた。
自分の身体の一部として、受け入れがたい形をしていたからだ。
繰り返された「痛み」の経験。それに加え、身体の一部に対して、「気持ち悪い」、と率直に感じた異物感。だがそれも紛れもなく自分自身であり、完全に否定することは、とうていできなかった。
それゆえに、自身の分身ともいえる作品をつくり出す行為は、氏家にとってこの強烈なコンプレックスと向き合い、自己を肯定していく過程でもある。
先天的な身体の不自由はしかし、この世の生き物には、一定数に起こりうることだ。それは生命の神秘によるものであり、どんな姿であっても、命の尊さには変わりはない。
多様性が叫ばれるこの社会のなかで、氏家の作品は「不完全な美」をありありと提示する。
苦しみを抱えているが、けして絶望はしないという意思。それらを昇華しようとする気概。
アーティストの生きざまを物語る作品には、気高き反骨精神ともいうべきものが表れている。
今まさに、陶芸というジャンルを超え、純粋に表現を追い求めようとする姿勢の先に、なにか大きな変化を迎える予感じみたものがある。それらはひそかに、しかし力強く、たしかな胎動を響かせはじめている。
(B-OWND)
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